うつ病とは

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精神医療における「うつ病」について

うつ病

「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」などと表現される症状を抑うつ気分といい、抑うつ状態、うつ状態とは抑うつ気分が強い状態です。このようなうつ状態がある程度以上、重症である時、うつ病と診断されます。

うつ病の分類

うつ病の分類方法の代表的なものを示します。原因からみて外因性あるいは身体因性、内因性、心因性あるいは性格環境因性と分けられます。身体因性うつ病とは、アルツハイマー型認知症のような脳の病気、甲状腺機能低下症のような体の病気、副腎皮質ステロイドなどの薬剤がうつ状態の原因となっている場合をいいます。内因性うつ病というのは典型的なうつ病であり、抗うつ薬がよく効くと言われ、治療しなくても一定期間内によくなるといわれます。

躁状態がある場合は、双極性障害と呼びます。心因性うつ病とは、性格や環境がうつ状態に強く関係している場合です。抑うつ神経症(神経症性抑うつ)と呼ばれることもあり、環境の影響が強い場合は反応性うつ病という言葉もあります。

このような原因を重視したうつ病分類とは異なる視点からの分類が最近、よく用いられています。たとえば、アメリカ精神医学会が出しているDSM-Ⅳという診断基準には「気分障害」という項目があり、それをうつ病性障害と双極性障害に分けています。さらにうつ病性障害の中に、一定の症状の特徴や重症度をもつ大うつ病性障害と、あまり重症でないが長期間持続する気分変調性障害があります。

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患者数

日本でのうつ病の生涯有病率(これまでにうつ病を経験した者の割合)は約10%と言われています。一般的に女性、若年者に多いとされるが、日本では中高年でも頻度が高く、うつ病に対する社会経済的影響が大きい。

厚生労働省が実施している患者調査によれば、日本の気分障害患者数は1996年には43.3万人、1999年には44.1万人とほぼ横ばいでしたが、2002年には71.1万人、2005年には92.4万人、2008年には104.1万人と、著しく増加しています。

診断(症状)

DSM-5の『うつ病性障害・抑うつ障害(Depressive Disorders)』より
大うつ病(Major Depressive Disorder)……大うつ病エピソードが最低でも1回以上存在すれば大うつ病と診断されるが、DSM-5では死別反応(対象喪失のストレス)による抑うつ状態を幅広く包摂するようになった。

DSM-Ⅳの大うつ病エピソードの診断基準より以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在。
これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分または(2)興味または喜びの喪失である。

1. その人自身の言明か、他者の観察によって示される抑うつ気分
注:小児や青年ではいらだたしい気分もありうる
2. 興味、喜びの著しい減退(その人の言明、または他者の観察によって示される)
3. 著しい体重減少、あるいは体重増加(例:1カ月で体重の5%以上の変化)、または食欲の減退または増加
4. 不眠または睡眠過多
5. 精神運動性の焦燥または制止
6. 易疲労性、または気力の減退
7. 無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感
8. 思考力や集中力の減退、または決断困難(その人自身の言明による、または、他者によって観察される)
9. 反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画

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  • 補足
    体に出る症状としては以下のようなものがあります。
    • 食欲がない
    • 体がだるい
    • 疲れやすい
    • 性欲がない
    • 頭痛
    • 肩こり
    • 動悸
    • 胃の不快感
    • 便秘がち
    • めまい
    • 口が渇く
  • 周囲から見てわかる症状
    • 表情が暗い
    • 涙もろい
    • 反応が遅い
    • 落ち着かない
    • 飲酒量が増える

原因・発症の要因

典型的なうつ病といえるのは、内因性うつ病で、うつ状態が一定期間持続し、治療しなくても軽快するといわれ、うつ病性エピソードと言われます。うつ病性エピソードは治った後も再発することが60%と言われます。

うつ病性エピソードは、環境のストレスなどが引き金になる場合もありますが、何も原因となることがないまま起こる場合もあるとされています。このようなタイプのうつ病では、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっていると推測されています。しかし、これもセロトニンやノルアドレナリンに作用する薬がうつ状態に効くことがあるため、考えられていることであり、まだ十分に実証されているとはいえません。
身体因性うつ病や性格環境因性うつ病のように、原因が考えられるうつ状態でも、セロトニンやノルアドレナリンが関係しているかどうかは、まだはっきりしていないと考えたほうがよいでしょう。
たとえば、うつ状態を起こす薬剤として知られているもののひとつにインターフェロン(IFN)があります。IFNによるうつ状態の原因は、血液の中からわずかに脳内に移行したIFNの作用、副腎皮質や甲状腺を介する作用、ドパミンやインターロイキンなどに関係する作用などが関係しているといわれ、とても複雑です。

一方、休みの日には比較的元気であるなどといううつ状態では、性格面の影響が大きいことが多いです。このような場合、「うつ病はあなたのこころが弱いとか甘えているわけではなく、セロトニンやノルアドレナリンなどの働きが悪くなった状態だから、薬をのんで休んだほうがよい」などというアドバイスは、逆効果になることがあります。

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治療

通常のうつ病治療の考え方

「うつ病はこころの風邪。早く薬をのんで休養をとりましょう」という啓発活動後、うつ病患者が増加しています。

身体疾患や薬剤がうつ状態の原因であったり、うつ状態に影響を与えていたりしないか検討します。もし可能性があれば、身体疾患の治療や薬剤の中止あるいは変更を考慮します。この場合も、うつ状態が重症であれば抗うつ薬を併用します。
身体疾患や薬剤が関係していないときは、抗うつ薬による治療を考えます。ただし、うつ病が軽症である場合は、抗うつ薬がそれほど有効でないとする報告もあります。また、双極性障害(躁うつ病)のうつ状態では原則として抗うつ薬を用いず、気分安定薬を処方します。
環境のストレスが大きい場合は調整可能かどうかを検討し、環境調整を提案します。過去にいろいろな場面でうまく適応できず、うつ状態になっている人で、性格面で検討すべき問題がある場合は、精神療法を一緒に考えていくことになります。
  • 抗うつ薬
    抗うつ薬が適応の場合、SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)を用いられることが多いです。
    SSRIは副作用が少ないと思われがちですが、頭痛、下痢、嘔気などはよくみられます。また服薬開始には、セロトニン症候群、減量や中止時には退薬症候群といって、かえって不安感やイライラ感が強くなったようにみえることもあります。
    SSRIが発売されて、精神医学を専門としないプライマリケア医(家庭医)もうつ病の治療に処方しやすくなりました。
    SSRIやSNRI(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という分類で薬物治療の方針が示されています。
  • そのほかの治療法
    うつ病の精神療法の中には認知行動療法、対人関係療法などがあります。認知行動療法のひとつとして、有効性の検証までには時間がかかるとしても、職場復帰を目的としたリワークが注目されています。また、抗うつ薬の効果が出にくい難治性うつ病や抗うつ薬の副作用が出やすい高齢者に対する無けいれん電撃療法も選択肢となっています。
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